近づいてみると、その肩がかすかに震えていて、思わず胸の奥がキュッと痛む。
泣いてる?
昼間の叱責が、そんなに堪えたのだろうか。
何を言われても、のらりくらり躱すような彼なのに──
と、そこまで考えて、私ははたと気づく。
いや、違う。きっとこの人、根は真面目なんだ。
だって、家族を養うために単身アイドルの世界に乗り込んでくるような人だもん。
どれだけ性格が悪くても、責任感だけは誰よりもあるに違いない。
そう思うと、さっきまでぱちぱちと燻っていた罪悪感が一気に膨れ上がった。
足音を殺して、そっと近づく。
なんて声をかければいいのかは分からない。
けれど、何も無かったことにしてこのまま立ち去るのは絶対にできなかった。
初めの一言を迷いながら、あと数歩の距離まで近づいた──
そのとき。
「……く、」
小さな声。
嗚咽かと思って耳を澄ますけれど──
よく聞いてみたら。
「くく……っ」
それは、笑い声だった。
「…………は?」
思わず、声が漏れる。
瞬間、目の前の彼はビクッと肩を跳ねさせた。
「っ……!!」
バッ、と振り返った彼。
街灯が彼の顔を照らしたけれど──
その瞳には、涙なんて微塵も滲んでいなかった。
…………はぁ???
