さっさと嫌いになってくれ〜アイドルオーディションで嫌われたい男装美少女、なぜか姫ポジ獲得?!〜



一度解いた男装を復活させて、ショーパンの上からスウェットパンツを履き、Tシャツの上から薄手の大きめジャージを羽織る。


……散歩がてら、スタジオに探しに行こう。


そんな考えのもと、私はスマホだけポケットに入れて寮を飛び出した。


建物の外に出ると、涼しい夜風が頬を撫でる。

深夜だからか、同じ場所のはずなのに、昼に見た時とはかなり雰囲気が違う気がした。


遠くから聞こえる車の音、どこかで流れている音楽の残響。

日本よりも街灯の数が少なくて、少し心細い。


私は不安を振り切るみたいに、羽織りのジャージの前を軽く掴んで、足早にスタジオ方面に向かっていた。


けれど、その途中。

ふと、人気のない、少し開けた高架下の広場に差し掛かったところで──

オレンジ色の街灯の下に、見慣れたシルエットが見えた。


「……?」


足を止め、目を凝らして見てみる。

ベンチに腰掛ける、パーカー姿の誰か。

目深に被ったフードからは有線イヤホンが伸び、片手で顔を覆うようにして俯いているようだった。


え、まさか。

あれって……篤彦?