そして、その夜。
ルームメイトである篤彦は、部屋に帰ってくる気配が無かった。
シャワーを浴び、着替えを済ませてぼんやりしていても、隣のベッドはずっと空いたまま。
時計の針はもうすぐ深夜を指すというのに、LINEの返信は返ってこないし、他のメンバーに聞いても目撃情報すらなく。
「……はぁ」
私は自分の布団に仰向けに寝転がりながら、軽くため息を吐き出した。
脳裏をよぎるのは、今朝のレッスンでの講評だ。
あの時の篤彦は、表情こそ崩していなかったけれど、明らかに余裕が無かった。
しかも、私の面倒を見たことを盾にすればいいのに、彼は決してそうしなくて。
その時のことを思い出すだけで、じくりと胸が痛む。
……もしかして、一人でずっとスタジオに残って自主練を続けているのかな。
だとしたら躍起になって、ひとりで無理をしていたらどうしよう。
あのまま意地になって踊り続けて、倒れていたりしたら──?
考えれば考えるほど、どんどん不安になってきてしまって。
私は自分でも気づかないうちに、ベッドから上体を起こしていた。
