ポルトガル語混じりの怒声が弾け、古いスタジオの壁を震わせた。
凄まじい、威圧感。
その場にいる全員が彼の気迫に押され、水を打ったように静まり返った。
その一方で、スタジオの四隅に控えるスタッフさんたちは、これぞオーディションの醍醐味!とでもいうように、篤彦とMr.Dの画にカメラをフォーカスしている。
スタジオを支配する重苦しい沈黙──
それを破ったのは、篤彦の掠れた声だった。
「……I apologize(申し訳ありません)」
「Don’t apologize. Prove it next time.(謝罪はいらない。次回見せろ)」
胸ぐらを掴んでいた手を乱暴に離して、Mr.Dは鏡の前へ戻った。
ふっと視線を伏せた篤彦を鏡越しに見て、胸の奥がぎゅうと痛くなる。
そんな私たちをよそに、再びドカッと鏡の前の椅子に座り、マイク越しに講評を再開するMr.D。
「Next. Sho(では次。翔)」
そこからやはり彼は気分を害してしまったのか、講評は辛口評価が続出。
その後のレッスンも、結局夕方5時くらいまで続いたけれど──
スタジオの雰囲気が和らぐことはなく、最後まで息が詰まるような空気感のまま、予定よりだいぶ早めに終了してしまった。
果たして私たちは、ブラジルで鬱にならずに日本に帰ることはできるのかな……。
そんな重すぎる不安が本気でよぎるほどに──
Mr.Dのダンスレッスン初日は、精神衛生上最低最悪の印象を残したのだった。
