さっさと嫌いになってくれ〜アイドルオーディションで嫌われたい男装美少女、なぜか姫ポジ獲得?!〜



「──However(しかし)」


Mr.Dの低い声が、再び響いた。


「But someone was terrible today.(今回、最悪な奴もいたな)」


その言葉に、空気が一瞬にして凍りつく。

全員が背筋を伸ばす中、Mr.Dはサングラスを外しサイドテーブルに置いた。

そのことで、彼の見ている先がハッキリと分かるようになる。


「You know it too, don't you?(なぁ。自覚はあるだろ)」


彼の視線の向かう先は──


「Atsuhiko」


篤彦。


……は。

なんで……?


驚いて、反射的に彼に視線を向ける。


篤彦は俯いていた。

見たことがないほど、硬い表情。

いつもの人を食ったような笑みも、爽やか好青年ヅラもなく、ただ追い詰められたみたいに床を見つめていた。


……何故彼が怒られているのか、理解ができない。

だって、さっき彼が私に教えてくれたとき、彼はすごく上手だったはずだ。


「I expected more from you. I really did.(お前には期待していた。心の底からな)」


戸惑いの滲む空気の中、Mr.Dは立ち上がった。

そのまま一歩。


「But what was that?(だが、今のはなんだ?)」


また一歩、篤彦に詰め寄る。


「Forget sharpness. You’re not even hitting the beats.(キレはおろか、音すら拾えていないじゃないか)」


やがて、篤彦の目の前までやってきたMr.Dは──


「What exactly did you spend the last hour doing?(この一時間、一体何をしていた?)」


ついに、声を荒げた。


乱れた前髪に隠され、篤彦の瞳に映る感情は読めない。

けれど、引き結ばれた唇が、彼の確実な焦燥感を物語っていた。