その言葉を受け、私は、思わず床に視線を落とした。
……やっぱり、私の小細工はまだまだプロには通用しなかったってことか。
ちょっとでもできるようになったかも、なんて思っていた私がバカだったな……。
悔しさが込み上げて、思わずぎゅっと手を握り締めた──
そのとき。
「──But(だが)」
彼の声のトーンが、少し変わった。
「Maybe I don’t need to force my style on you.(お前に、俺のスタイルを押し付ける必要は無いのかもしれないな)」
え?
思わず、顔を上げる。
サングラス越しに目が合ったその瞳は、何故だか先ほどと比べてどこか楽しそうで。
「If you push that style far enough, you might become one hell of a monster. It’s artificial. But somehow, it feels alive.(そのスタイルを突き詰めれば、お前はとんでもない化け物になるかもしれない。作り物なのに、どこか『生』を感じる)」
……なんか、案外、気に入られてる……?
息を止める私。その横顔にカメラがフォーカスしてくる。これぞオーディション番組!とでもいうように。
「What happened to that boy who froze up at LUCA?(LUCAで石みたいに固まってたお坊っちゃまはどこへ行ったんだよ?)」
言いながら、軽く口元を緩めて。
「You’ve gotten better.(上手くなったな)」
真っ直ぐにそんな言葉を投げかけてきた彼に、思わず喉の奥が熱くなった。
「……Thank you」
掠れた声で絞り出し、頭を深く下げながら、思う。
……ほんっと、そういうのやめてよ……。
オーディションの先生って、どうしてもこうも下げてから上げたり、上げてから下げたりするんだろう。
受けて立つ側からしたら心臓に悪いからやめて欲しい。褒めるなら最初っから普通に褒めて。
と、文句は色々あるけれど、それでもとりあえずは安心だ。
踊れなすぎてMr.Dをブチギレさせ、カメラの前でガン詰めされるという最悪シナリオを回避できただけでも充分。
もっと精進しよう……。
と、一人決意を固めていた、そのとき。
