今回のコレオは、Mr.Dというだけあってやはりかなり複雑で緻密なものだった。
けれど、曲調がスウィング系だったことが、個人的には最大の救い。
なぜなら、スウィング特有のジャズ要素が、ヒップホップと融合して盛り込まれていたからだ。
もしLUCA合宿の時のようなゴリッゴリのローヒップホップだったら、きっと太刀打ちできず即死不可避だっただろう。
私は昔から重心を高めにキープするダンススタイルを専攻してきたので、ヒップホップに比べたら、ジャズの方が幾分かやりやすいのだ。
それに、篤彦の(カメラ前限定の)優しさもあり、辛うじて振りは頭に入れることができた。
今誰かに急に話しかけられでもしたら、全部脳内から消し飛びそうなくらいには限界だけど、集中さえすればきっと大丈夫。
──そう、集中。
これは、私のもっとも得意な分野だ。
頭を空っぽにして、本能のままに踊るのではなく。
脳を一瞬も休ませることなく、動かし続ける。
つまり、徹底的に『理詰め』で攻めること。
それが私の確立すべきダンススタイルなのだと、あの泥沼のLUCA合宿で気づいた。
音に身を任せない。
並べられた音を、全て的確に、冷静に拾い上げる。
一番綺麗に見える角度で、計算し尽くされた軌道を描いて。
『楽しむ』よりも『魅せる』こと──
それが、私の本領だから。
考えろ。
静まり返ったスタジオ。数秒の空白の後──
最初のビートが、鋭く走って。
途端、私の意識は雑音をシャットアウトし、脳の奥へと沈み込む。
そして、自分を一番魅せられる角度で──
最初の拍を、取ったのだった。
