さっさと嫌いになってくれ〜アイドルオーディションで嫌われたい男装美少女、なぜか姫ポジ獲得?!〜



そして、早くもおよそ四十分が経過。


どんな状況かというと──

私は鏡の前で、またもや絶望の淵へ立たされているところだった。


「…………」


えー……

なぜ。

なぜ、私以外全員、振り入れ終わってるんですか……???


まず、異常だったのは椎木篤彦だ。

彼はコレオ動画初見からおよそ十分で、新曲の振りをほとんど頭に叩き込んでいた。


正真正銘のプロダンサー……を通り越して、化け物である。

一体どんな脳構造をしていたらこの複雑なコレオをこの短時間で処理できるのか。


ただ、エマプロで異常なのは決して椎木篤彦だけではない。

案の定、天鷲翔や皆戸遥風あたりも、彼に続いてすぐに頭に入れてしまった。


そこからは怒涛のクリアラッシュで、陽斗、栄輔、京、雪斗……気づけば私以外の全員が振り入れを完了し、それぞれディテールを詰める作業へと移行している。


対する私は?

なんと、まだ二番の途中。

笑えません。


……振りが入らないのは勿論だけど、それ以上に体力が続かないのだ。

早くも全身の筋肉が悲鳴をあげ、視界がチカチカと明滅し始めている。

このままではヤバい、と思った私は、一度練習を中断し、スタジオ後方に向かうことにした。


「……はぁ、……っ、けほっ」


これ以上立っていることもできずに、自分の荷物のそばに座り込む。

雪斗からもらった冷えピタは熱気に追いつかず、もうほとんど機能していないようなものだった。

私はパタパタと小さく襟元をはたきながら、水をグイッと流し込む。