さっさと嫌いになってくれ〜アイドルオーディションで嫌われたい男装美少女、なぜか姫ポジ獲得?!〜



「……」

「……?」


いまだに状況を理解できず、私たちは硬直していた。

ゴォォ……という役立たずエアコンの音だけが、静かなスタジオに響く。


……なんか。

なんかさぁ。

私って、こういうヤバい大人を引き寄せちゃう体質か何かなのかな???


榛名優羽、式町睦、巫静琉、ルシアン・クロフォード、九条総一郎、そしてMr.D……

日本でもアメリカでもブラジルでも、必ずと言っていいほど何かがおかしい大人に遭遇する。最悪の不運体質だ。


「……バックれる?」


沈黙を破ったのは、京。

いつもなら怠けるなと一喝する周囲も、今回ばかりは流石に真剣に検討し始めた。


「さすがにアリっすね」

「ブラジル観光しに行く?」


雪斗の提案に、目を輝かせる栄輔。


「アマゾン川で川下りしたいっす」

「いいね。陽斗もアナコンダと戦いたいらしいし」

「言ってないけど?!」

「どうすか、スタッフさん」

「ダメです」


即却下された。

練習してください、と圧をかけられ、彼らは「うぁーークソ」「暑いって……」と呻きながらも動き始める。


私も彼らのように悪態をつきたかったけれど、周囲にはカメラがある。

優等生千歳くんのイメージを崩さないためにも、ここは黙ってやるしかない……。


と、そんなこんなで。

壊れたエアコン、文句の嵐の中──

地獄の振り入れ一時間が、幕を開けるのだった。