「That’s not realistic. We need at least two hours.(現実的じゃありません。せめて二時間は必要です)」
私たちの内心を代弁するように声を上げたのは、またしても翔だった。
彼なら元の条件でもなんとかなりそうなものだけど、私たちのために抗議してくれたのだろう。
さすが、我らがエース……!!と内心大感謝する私だったけれど。
「I thought about giving you thirty. Consider this mercy.(三十分にしようか迷っていた。慈悲だと思え)」
バッサリ。
はなから聞き入れる気のないMr.Dは、涼しい顔でそう断言すると。
そのまま自分の荷物を肩にかけ、何故かスタジオ出口へと向かい始めた。
……はぁあ??
「Wait, where are you going(ちょっと、どこ行くんですか)」
声を荒げる翔。するとMr.Dはゆるりと振り返り、軽く肩をすくめた。
「Choreo first. Lesson after.(まず入れろ。レッスンはそれからだ)」
愕然。
あまりの放任主義に呆れてものも言えない私たちを前に、Mr.Dはグッと親指を立ててニカッと笑ってきた。
「Don’t worry. I’ll be back in an hour. Be ready(安心しろ。一時間したら戻ってくる。仕上げておけ)」
と、そんな捨て台詞を最後に──
ガチャン。
無慈悲にも閉まった、スタジオの扉。
