渋々といった感じでエアコンから離れ、スタジオ中心に移動する翔たち。
私たちも立ち上がり、メインカメラに映る範囲に向かう。
どれだけ気が乗らなかろうと、スケジュールを遅らせるわけにはいかない。
前代未聞の最悪コンディションの中で、無慈悲にも撮影はスタートした。
鏡の前の椅子にドッカと座り、その背にもたれたまま、改めて私たちをぐるりと見渡すMr.D。
「Some of you know me. Some of you don’t. I’m Mr. D. Diego Dantas. Madureira is my home.(初めて会う奴もいる。そうじゃない奴もいるな。Mr.Dだ。本名はディエゴ・ダンタス。マドゥレイラは俺の故郷だ)」
ディエゴ・ダンタス……。
本名を初めて聞いたけれど、その響きを聞いてみると、確かに南米出身の匂いがある。
そういえばブラジルってストリートダンスが盛んだってよく聞くし、そう考えると彼がこの地出身なのは意外と納得できるかも。
「Japan’s far away, but it’s not exactly unfamiliar to me. I had two Japanese dancers in D-PARTY. Shuna was one of them.(日本は遠い国だが、俺にも縁がある。二人の日本人が俺のクラン『D-PARTY』に所属していたからな。そのうちの一人が朱那だ)」
え、そうだったの……?!
ってことは、朱那さんが引率だったのは実は静琉の粋な気遣いゆえだったりしたのだろうか。
そんなことを考えて、一瞬彼のことを見直しかけた私だったけれど。
いや、あいつに限ってそれはないな、と思い直す。普通に国内でパチ打ってたかっただけだろう。
