さっさと嫌いになってくれ〜アイドルオーディションで嫌われたい男装美少女、なぜか姫ポジ獲得?!〜



「はぁ……」


思わずため息を吐いて、グシャリと前髪をかき上げる。

熱が大敵!とか言った翌日にこれは意味が分からない。完全に運に見放されすぎている。


換気のために窓は全開にされているものの、外から入ってくる空気もじっとりぬるい。なんなら暑い。

これから数時間どころか、毎日ここで踊るの……?


絶望に打ちひしがれる私。そんな私を遠巻きに見て、何やらニヤニヤと意地悪な笑みを浮かべる男がいた。

椎木篤彦である。

『可哀想に♡』とでも言いたげなその視線に、私は思わず舌打ちしたくなった。性格わっる。死ね。

と、畳み掛ける不運を前に完全にやさぐれていた私だったけれど──


「千歳くん、こっち向いて」


不意に隣から声をかけられ、振り向く。


すると、そばに座っていた栄輔が、私の方へ小型のハンディファンを向けてくれていた。

ぶおぉ、と控えめな風が頬に当たり、思わず目を細める。


「あ……涼しー……」


思わず気の抜けた声をこぼしてしまった。

風で前髪がパタパタと揺れる感触が、信じられないくらい心地いい。


すると栄輔はなんとも言えない絶妙な表情で固まったあと、ふっと口元を緩めた。

そのまま、スッと私の頭に手を伸ばしかけて──

「あ、いや」と慌てて堪えるような様子で引っ込める。スキンシップ禁止令を思い出したのだろう。