さっさと嫌いになってくれ〜アイドルオーディションで嫌われたい男装美少女、なぜか姫ポジ獲得?!〜



三十分ほどの追いかけっこの末、なんとか椎木篤彦から鍵を奪還し、ようやく中に入れてもらえた頃には、私たちは既にレッスン前とは思えないほど疲れ果てていた。


暑い、喉乾いた、死にそう……

けど、きっともう大丈夫。

ここから先は、きっと冷房の効いたスタジオが私たちを待っている。


涼しい空気に包まれながら、心身ともにリセットして、爽やかにダンスレッスンを始められるはず──

だった、のに。


ゴォォォ……カタカタカタ……


「…………」


スタジオの天井付近に設置されたエアコン。

そのあまりに弱々しい駆動音を聞きながら、私は一人死んだ目になっていた。


──詰みかもしれない。


「ちょ、うっそでしょ。マジ?」

「これ送風じゃない?」

「『Frio』って書いてある。冷房だよ」

「嘘つけよ貸せ」


後からやって来た男性陣、陽斗・京・翔・遥風あたりが、いまだにエアコンの下であーだこーだと試行錯誤している。


その後ろ姿をぼうっと見つめながら、私は悟っていた。

無駄だよ。あなたたちがここに来るまでに、私たちで何回も試した。

その結果がこれである。