さっさと嫌いになってくれ〜アイドルオーディションで嫌われたい男装美少女、なぜか姫ポジ獲得?!〜



……まあ、とはいえ、遥風の立場になってみれば、そんな理屈で納得できるはずがないか。

ただでさえ色々我慢させているのに、同室の男の前でこんな格好をしていたら、不安になるのも当然だ。

どう言い訳するべきかな、と膝を抱えたまま思考を巡らせる。


けれど、その結論がまとまりきる前に──

廊下の向こうから、何やら楽しげな話し声と足音、機材がガチャガチャ擦れる音が近づいてきた。


……突撃撮影陣だ。


遥風はまだ何か私に言いたそうにしていたが、その物音を聞き取ったのだろう。

不機嫌に舌打ちをすると、渋々目の前から立ち上がって。


──ガチャンッ!!


叩きつけるように、クローゼットの扉を閉めた。

その音に、思わずビクッと肩が跳ねる。やばい、だいぶ怒ってる……?


完璧に萎縮しつつも恐る恐る聞き耳を立てると、完全に閉まった扉の向こうから、篤彦と遥風の会話がぼんやり聞こえてきた。


「遥風くん、落ち着けって。扉壊れるわ」

「うるさいです」


そんな二人の会話を聞きながら、私は膝を抱えて小さくため息を吐き出す。


……ああ、申し訳ないな。


遥風が私との約束を守るために、どれだけのストレスと戦って、色々なものを耐えてくれているかは痛いほどに分かっている。

それなのに、さらに不安にさせるようなことをしてしまって、本当に申し訳ない。