さっさと嫌いになってくれ〜アイドルオーディションで嫌われたい男装美少女、なぜか姫ポジ獲得?!〜



え、なんで遥風が……?


「何?」

「今カメラが部屋順に回ってて、俺らんとこはもう来ました。今は京のとこで、たぶん最後こっち来ます」


ちょっと焦ったような遥風の声。

私はその内容に、思わず顔を顰めた。


いや、なんで……今まで寮のプライベート空間には絶対カメラ入ってこなかったのに。

撮影スタッフさん達も、異国の開放感に浮かれて『突撃!夜のルームツアー』的なものをやりたくなっちゃったのだろうか。大迷惑すぎる。


と、思わず頭を抱えている間にも、遥風はどこか落ち着かない様子で。

その視線は、何かを探すみたいに部屋の中を走っていた。


それを察したように、篤彦がちょっと首を傾げる。


「千歳?」

「はい」

「おるよ」


篤彦が特に隠すでもなく適当にクローゼットの方を顎で示すと、遥風の視線がこちらを向いた。

あ、普通に教えちゃうんですね……。


そんなことを思っている間にも、足音がツカツカと迷いなく近づいてきて──


ガチャッ!!


勢いよく開けられる、クローゼットの扉。


眩しい部屋の明かりが差し込んで、ちょっと目を細めつつ。

恐る恐る顔を上げてみると、遥風と目が合った。


「…………」


目が合った瞬間、ちょっと息を呑んで、数秒間硬直する遥風。


な、何か。


少し怪訝に思う私を前に、彼は何かを堪えるみたいに一度だけ息を吐くと──

こちらに目線を合わせるみたいに、その場に膝をついた。