さっさと嫌いになってくれ〜アイドルオーディションで嫌われたい男装美少女、なぜか姫ポジ獲得?!〜



「いや、違っ、本当のことを言うつもりは、!あっ」

「お前蹴飛ばすでほんまに」


墓穴を掘る私に、彼は笑顔のままツカツカと詰め寄ってきた。


私は背中を壁に押し付けたまま、表情を引き攣らせる。

この人の場合、冗談じゃなくてガチで蹴り飛ばしてきそうだから怖すぎる。

自業自得だから何も言えないけど……!!

と、初日から物理的にルームメイトに捻り潰される覚悟を決めかけた、その時だった。


──ドンドンドンッ!!


突如、強く叩かれた部屋の扉。

篤彦の視線が、私から扉へと移った。圧から解放され、やっと呼吸ができるようになる。


ナ、ナイスタイミング……!


篤彦がくるりと踵を返し、扉へ向かう。

その間、私は慌てて、近くにあったクローゼットの中に身体を滑り込ませた。

男装を解いた今の姿を目撃されるわけにはいかないからだ。


完全には閉まりきっていないクローゼットの隙間から、外の様子を伺う。

篤彦がガチャリとドアを開けた。


すると、その向こう側に立っていたのは──

遥風だった。


急いで来たのか、ノーセットの前髪はちょっと乱れていて、耳元のピアスだけが廊下の明かりを拾って光っている。