確かに、彼の言ってることは正しい。
だって実際、さっきからずっと女の姿でいる私を、この人は全く変な目で見てこないから。
峰間京があからさまに『可愛いね〜♡』って茶化してきたり、栄輔が顔真っ赤にしてチラチラ見てきたりするのに慣れていたから、この反応は私にとって少し新鮮だった。
マジで私のこと好みじゃないんだろうな……
学校で夏葉ちゃんが言ってた、『視線が健全』ってこういうことなんだと思う。
そう考えると、まあ、身体的に安全であるのは間違いない。
──けれど。
残念ながら、精神的には最悪だ。
だって、どれだけ静琉に牽制されようと、コイツが何もしてこないわけがないし。
仮に万が一何もしてこなかったとしても、同じ部屋のベッドでこうしてスマホをいじられるだけでなんか嫌。
そう、すなわち──
「存在が嫌」
ボソッ。
思わず唇からこぼれ落ちた言葉に、ぴたりと視線の先の人影が動きを止める。
……あれ。声に出てた?
疲労でフィルターが働いていなくて、つい本音が漏れてしまったらしい。
やべ、と口を押さえた時にはもう遅かった。
沈黙が数秒間続いた後──
はぁーっ、と特大のため息が落とされる。
「……分かった。俺に構ってほしいんやな、千歳ちゃんは」
言いながら、グシャリと乱雑に髪をかき上げると、スマホをベッドに放り投げて上体を起こす篤彦。
表情はニコニコしているが、濡れた前髪の隙間から見える瞳に、明らかに不機嫌がちらついている。
まずった。
