「っ、重っ……!!」
ぎぎ、と床を擦る虚しい音。
悲しいかな、見た目以上にぎっしりと詰まったそのベッドは、私の貧弱な力では数ミリずつしか動いてくれなかった。
詰みじゃん……
明日時間があれば、ホームセンターに行って衝立でも買ってこようか。
……ブラジルにホームセンターってあるのかな?
ポルトガル語で『衝立をください』ってなんて言うの?
と、そんなくだらない思考を巡らせながら、必死にベッドを押し続けていた──
そのとき。
「手伝いましょうか」
ビクッッッ!!!!
突如背後から聞こえた声に振り向くと。
そこに立っていたのは──
ルームメイト・椎木篤彦。
シャワー上がりらしく、濡れた髪をタオルで押さえたまま、こちらを見下ろしていた。
私は数秒間固まったあと──
条件反射でズザッ!!と部屋の対角線上へ後退する。
「……近寄らないでください」
「さすがに喜びすぎやろ」
「は?」
思わずガチトーンで返す。
しかし、私の刺すような視線などどこ吹く風。
椎木篤彦は濡れた髪の毛をタオルでグシャリとかき上げながら、すぐに興味なさげに目を逸らした。
……あれ、思ったより絡んでこない。
身構えていたぶんちょっと拍子抜けしつつ、私は恐る恐る聞いてみる。
