さっさと嫌いになってくれ〜アイドルオーディションで嫌われたい男装美少女、なぜか姫ポジ獲得?!〜



その後、大量にあると思われた自由時間は、思いの外あっさりと溶けていった。


近所のスーパーへと買い出しに行ったり、寮の周辺を軽く探索してみたり、自分の部屋でせっせと荷解きをしていたら、いつの間にか時間は進み──

気づけば、もう夜。窓の外は真っ暗だ。


若干残った時差ボケと異国の暑さでダメージを受けた身体を、まずはシャワーでリフレッシュする。

……シャワーがそれぞれの部屋に備え付けられてあったのは、だいぶ不幸中の幸いかも。


こういう海外の寮って、廊下に出て共同シャワーを使わなくちゃいけないパターンが多い。

もしそうなっていたら、私のブラジル生活は初日から崖っぷちになっていただろう。


……いや、まぁ今でも充分崖っぷちなんだけど。

だって、部屋がこれだもんなぁ。


シャワーから出て、男装状態を解いた私は、腕を組んで部屋に並ぶ二つのベッドを見下ろしていた。


……なぜ、よりによって平置きツインベッドなの。相場二段ベッドでしょ。

この配置じゃ、寝てる間に私のスマホを覗かれたりどうこうされてしまう。

もちろん、弱みなんて握られ放題だ。


……無駄な足掻きでもしておくか。


私は小さくため息を吐いてから、無言で片方のベッドに歩み寄る。

そして端を掴むと、できるだけ距離を取るべく、思いっきり壁側に押しやり始めた。


けれど──