さっさと嫌いになってくれ〜アイドルオーディションで嫌われたい男装美少女、なぜか姫ポジ獲得?!〜



けれど彼は、当然のようにそんな私を追いかけてくる。


「ひど。そんな冷たくせんでもええやん」


無視無視。


「ほら、同じ部屋になった以上、変にいがみ合っててもお互い損やしさ」


……ん?

急に、穏便に済ませる気があるみたいなことを言ってきたものだから、私はつい立ち止まってしまった。


……もしかして、話し合いの余地ある?


そんな淡い期待に硬直すると、その隙をついて、背後の気配がすっと近づく。

そして耳元、マイクに拾われないくらいの声量で──


「また仲良くサシ飲みしよな、千歳ちゃん」


甘ったるく、落とされた。


…………

………………

やっぱダメだこの人。更生の余地なし!


私は反射的にくるりと方向転換、そのまま寮の出口へと一目散に向かった。


篤彦は私をいじめることに満足したようで、もう追いかけてはこない。

駆け寄ってきた栄輔に「千歳くんに絡むな!!」と怒られていた。


私はそんな様子を一瞥もせず、さっさと寮を飛び出す。

小走りで寮から少し離れた茂みまでやって来ると、すぐにスマホを取り出して、電話アプリを開いた。


──危ない。

あまりにも危なすぎる、あの人は。


どう考えても、私の社会的死が迫っている。こうなったら最終手段で、社長に直談判するしかない。

私は未だにバクバクと高鳴る心臓を押さえつつ、巫静琉の携帯番号を三秒で叩きつけ、着信ボタンをタップした。