さっさと嫌いになってくれ〜アイドルオーディションで嫌われたい男装美少女、なぜか姫ポジ獲得?!〜



ロータリーから番組手配の送迎バスに乗り込み、揺られること数十分。


窓の外に流れていく景色は、空港近くの整えられた街並みから、少しずつ生活感の濃いものに変わっていった。

低い建物の壁にはやたらビビッドな色の看板が立ち並び、開け放たれた店先からは音楽が漏れ聞こえてくる。


……そして、なんというか、ヤシの木、ありすぎ。

リゾート感が出るから観光地にだけ生やされているのかと思ったけど、そんなことはないらしい。

ここブラジルでは、街路樹みたいなノリでヤシの木が至る所に立っている。


そんな異国情緒満載の光景を、窓から吹き込んでくる風を額に感じつつ、ぼんやり眺めていると。

隣に座った遥風が、不意に声をかけてきた。


「なぁ、これ今どこ向かってんの?スタジオ?」


さっきのショッピングで存分にはしゃぎ尽くしたのか、早くも疲れてそうな様子の彼。

内心ちょっと苦笑しつつ、私はさっきスマホに送られてきた合宿スケジュールを確認した。


「……あ、今日はまだレッスン無いみたい。寮でちょっと撮影したあと自由時間だって」

「寮で撮影?何をだよ」


眉根を寄せる遥風。私も無言で首を傾げる。


確かに不思議だ。今まで日本での撮影でも、寮にカメラが入ることはあまり無かった。

そんなエマプロがわざわざカメラ入れて撮影って、到着リアクションを撮った方がいいような面白い建物なのかな?