けれど今更訂正するわけにもいかないので、私はちょっと黙り込む。
するとその沈黙を肯定と受け取ったのか、店員さんの目がまたしてもキラリと輝いた。
待て。
「Wait, wait(待って待って)」
慌てて制止するも、聞かずに再びルンルンと店の奥に消えていく店員。
そしてもう一度戻ってきた時には──
胸元がガッツリ開いたレースキャミソールを大量に抱えていた。
「Sexy pajamas!!(セクシーパジャマ!)」
「Not sexy!!(ノットセクシー!!)」
食い気味に叫ぶ。
「Oh, shy(あら、シャイ)」
「Not shy(違います)」
シャイとかそういう問題ではない。社会的生死がかかっているのだ。
もうこの店ダメだ。出ようか。そんな考えが一瞬頭によぎる。
けれど、ここまで来たら一周回って、絶対に折れるもんかという変な意地が出てきてしまった。
何度も言葉を変えつつ、できるだけシンプルな語彙で、こちらの意図を伝えようと試みる。
しかしこの店員ミーハーなのか、なんでも彼氏に結びつけてきて、なかなか私のニーズに合ったものを出してこない。
と、そんな押し問答を数十分続けた後、ようやくなんとかマシな服をかき集めた私は。
「Have a nice day, shy girl〜♪(よい一日を、シャイガール♪)」
店員さんの朗らかな声を背に、息も絶え絶えで店を後にした。
握りしめた紙袋には、薄手のTシャツが三枚。胸元の開きが比較的浅いキャミが三枚。ショートパンツが二枚。
なんとか、まともなラインナップを揃えることに成功した。妙な達成感が湧き上がる。
……まあ、まともと言っても、日本基準で見ればだいぶ危うい。
キャミはあわよくばもう少し首元詰まってて欲しかったし、ショーパンだって絶対に部屋の外には出られない丈をしている。
けれど、これでもあの店の中ではトップクラスに健全なエリートたちだ。
……こんな風に思ってしまっている時点で、私はすでにブラジルに毒され始めているのかもしれないけど。
