萎縮して後ずさる私に、なぜかずんずんと大股で近づいてくる黒ずくめの男。
えっと、これは通報すべき?でも、ブラジルの警察って何番……
「ちょっと、遅いんだけどっ!」
……って、なんだ、陽斗か。
近づいてみると、『黒い布』の正体がようやく分かった。
黒い帽子にサングラス、フェイスカバーにアームカバー。日焼け対策が行きすぎている。
私はちょっと仰け反りながらも、とりあえずその不審者に謝っておく。
「えっと、ごめん……遅刻だった?」
「遅刻はしてないけど!お前のせいで僕、雪くんに千円支払っちゃったじゃん」
「え?」
身に覚えのないことで急にキレられ、朝っぱらから大困惑。
と、そんな私に、雪斗は千円札をひらひらと見せながら上機嫌で話しかけてきた。
「俺ら一番乗りだったからさ。暇つぶしにエマプロダービーやってたんだよ」
「エマプロダービー」
「誰が何番目に来るか予想するゲーム」
また朝っぱらからしょうもないことを……。
陽斗はともかく、雪斗ってこういうノリに乗っからなそうなのに、しれっと参加しがちだよね。
やっぱり男子高校生、と呆れ混じりに笑ってしまう。
そんな私に、向こうで黙ってスマホを見ていた京もキャリーケースを引きながら歩み寄ってきた。
