──と、そんな地獄の大移動を経て、翌日。
睡眠とは偉大なもので、昨晩はこの世の終わりのような有様だった身体も、一晩眠ればすっかり元気を取り戻していた。
鏡の前で身支度を整えながら、一人思う。
……今までの人生で、一番深い眠りだったかもしれない。
その証拠に、いつもは一回の目覚ましですぐに起きられるのだけど、今回ばかりはそうもいかず、危うく寝過ごすところだった。
ちなみに、目を覚ましたのは集合時間の一時間前。
男装をしなければいけない私にとってはなかなかギリギリの起床だったけれど、シャワーを浴び、ヘアセットにメイク、服まで整えて、どうにかこのまま滑り込めそう。
「よし」
気合いを入れるように軽く一息吐いて、部屋を出た。
チェックアウトは番組スタッフさんにお任せし、キャリーケースをゴロゴロと引きながらホテルロビーに向かう。
すると、すでにそこには私以外の全員が揃っているようだった。
「あ、千歳くん!」
最初に私に気づいたのは、栄輔。こっちこっち、と笑顔で手を振ってくる。
地獄のフライトで一番のダメージを受けていた彼も、やはり若さゆえなのか、早くも完全回復しているらしい。
元気そうで良かった、と胸を撫で下ろしかけた、そのとき。
ぐりんっ!!
不意に、全身を黒い布で覆った謎の男が、ものすごい勢いでこちらを振り向いた。
撫で下ろしたはずの心臓が跳ね上がる。
テロリスト?
