「さーて、そろそろ移動するよボーイズ!!ボケッとしない!!」
弾かれたように顔を上げると、その視線の先には──
鼓朱那さん。
キャリーケースを片手で引き、染め直した赤髪ボブを揺らして、ツカツカと大股でこちらにやってくる。
長時間フライトの後だというのに、髪もメイクもまるで崩れていない。これがプロの所業か。
「ドバイ空港はダンジョンだからね。一回置いて行かれたら終わりだと思って」
ハキハキと言いながら再び歩き出す朱那さんに、重い足取りで続く参加者たち。
いつもは体力無尽蔵な彼らだが、さすがに今回ばかりは無駄口を叩く気力も無いらしい。
当然だ。
だって、まず日本でエマを出発したのが深夜。
そこから夜2時半の成田発に乗り込み、11時間以上に及ぶ悪天候フライトを経ての今である。
夜逃げみたいでワクワクする〜!とか呑気にはしゃいでいた栄輔は、既に死んでいて翔に運ばれていた。可哀想に。
……ところで、なぜ今回の引率が静琉ではなく朱那さんかと言うと。
『めんどくさいから』
イェーイ、と真顔で言い放った巫静琉の姿が脳裏をよぎり、私は軽く舌打ちした。
そもそもコイツがブラジル行きを直前に決めたせいで飛行機が空いておらず、ドバイ経由とかいうわけ分からんルートを取るハメになったのだ。
アメリカ経由なら、いくらかフライト時間も短縮できただろうに。
イカれ企画と雑運営でこっちを地獄に放り込んだくせに、自分は安全圏でピースとは……
相変わらず、どこまでもロクでもない男である。死ねばいいのに。
と、今更毒づいても仕方がない。
私たち一行は、まとめてドバイからリオ行きの飛行機に詰め込まれ、その後、約15時間の超長時間フライトをなんとか生存。
ようやく地球の裏側に降り立ったときには、もちろん全員満身創痍で。
異国情緒に酔う暇もなく、空港近くのビジネスホテルに身を投げ、泥のように眠ったのだった。
