さっさと嫌いになってくれ〜アイドルオーディションで嫌われたい男装美少女、なぜか姫ポジ獲得?!〜



とさっ、と。

肩口に顔を埋めた遥風が、静かに落とした。


「最後」


その声に、さっきまでのからかいの色はない。


静かで、少し掠れていて。

──どこか、痛そう。


「一回だけ」


その切実な声音に、何も言えなくなった。


……一回、だけ。


ぎゅう、と心臓が締め付けられる。


こんなの、きっと、許しちゃダメなんだと思う。

押し退けるべきだって、分かってる、けど。


──もう二度と、こうやって抱きしめてもらえることもないのかもしれない。


しばらく空中で止まったままだった両手を、ぎこちなく遥風の背に添えた。


すると応えるように、ぎゅうと抱きしめる力が強くなる。

遥風の爽やかな香りが、鼻腔をふわりとくすぐった。



──最後。


これで最後。


本当に最後。



そう自分に言い聞かせて、湧き上がる罪悪感を塗りつぶしながら。

私は結局、数秒間、その抱擁を受け入れるしかできなかった。