さっさと嫌いになってくれ〜アイドルオーディションで嫌われたい男装美少女、なぜか姫ポジ獲得?!〜



怒っ、てない。

どこか優しげな、ちょっと呆れたような、そんな眼差し。


「とりあえず、俺がちゃんと千歳以外に打ち込めることがあった方が、千歳は安心するってことだろ」


さらり、と言語化してくれた遥風。

私がこくこく、と頷くと、遥風はふ、と息を漏らすように笑った。


少し名残惜しそうに私の頬から手を離して、一歩、私から距離を取る。


「じゃ、いいよ。俺は千歳が幸せなら、それで」


『千歳が幸せなら』


その言葉に、私はちょっと目を伏せた。


遥風って、ずっとそうだ。

二次審査のときからずっと、私のために、って動いてくれてる。


極端な行動ばっかりして、自分中心的に見えるけど、結局はだいたい私を守るためで。

どれだけ幸せになってって伝えようとしても、結局、動機は私の幸せのままなのが、彼らしいというか、なんというか……。


でも、まあ、とりあえず。


「ありがとう」


私が顔を上げて笑うと、遥風もちょっと笑った後、軽く肩をすくめた。


「ただ、今まで通り話そうな。俺お前以外に友達いないから」

「そんなことは……うん……」

「おい」


すぐさまツッコんできた遥風に思わず笑ってしまう。

確かに、今日もずっと一人でスマホ弄ってたし……言われてみればそうかも。

敵ならいっぱい居そうだけど。


と、そこまで考えたところで、はたと思い出す。

そういえば、遥風に渡しておきたいものがあったんだった。