収録後。
練習用のスタジオに移動した私たち8人は、思い思いの場所に腰を下ろしレッスン準備を始めた。
開け放たれた窓からは外の喧騒が聞こえ、太陽の光が埃の粒をキラキラと反射させている。
真冬に始まったこの番組だが、ファイナルまで来てしまえばもう初夏だ。
スタジオ後方、それぞれの荷物が投げ出してあるあたりに固まってスマホを弄っているのは、兎内双子に、篤彦、京。
「……ブラジルって南半球じゃん。ってことは、今は向こう秋ってこと?」
「けど、調べたら平均気温普通に夏」
「えぇ〜最悪……焼けちゃうじゃんもぉ〜」
「けどそれだったら、千歳の薄着が見れるってことか」
「うわキモ」
「発想キッショ」
「死ね」
秒で袋叩きにされる峰間京。
またなんか変な会話を……お願いだからマイクに拾われてませんように。
思わず呆れた溜息を吐きながら、レッスンに向けて一人ストレッチをしていた、その時。
目の前に、ふっと影が落ちた。
顔を上げると、そこに立っていたのは──
「遥風」
さっきまで話の輪に加わらず、イヤホンをつけスマホを見ていた遥風だった。
京の発言が気に障ったのか、かなり不機嫌そう。
「……来て」
拒絶を許さないトーンでそう言われ、私は慌ててカバンを掴んで立ち上がった。
……そうだった。
ブラジルの衝撃が大きすぎて有耶無耶になっていたけれど、私、この人とちゃんと話をしておかなきゃなんだった。
くるり、と踵を返す遥風。
いつもなら腕を引きそうなところだけど、彼なりに配慮してくれているのだろうか。
申し訳なく思いつつ、私も彼に続いてスタジオを出ようとする。
出るときに、スタジオに残った京や栄輔からの視線が痛かったけど、私は振り返らずに彼のあとを追った。
