「『Dais』振付提供のMr.Dは、世界を股にかけるコレオグラファー。多忙を極める彼が、わざわざあなた方のために日本へ足を運ぶ余裕はありません」
……ほう。ってことは、リモートかな?
リモートならまだ、あの圧を直接感じるよりはマシ……と安堵しかけた私だったけれど。
「──なので、こちらから彼の活動拠点を訪れます」
そんな希望は、一瞬で粉砕された。
な、なんだそれ……しかも、彼の活動拠点って、また海外ってこと?
戸惑う私たちをよそに、静琉はどんどん話を進めていく。
「ファイナル前半では、Mr.D率いるダンスクラン『D-PARTY』の拠点スタジオに三週間ほど滞在、そこでみっちりと合宿を行い、ダンスナンバー『Dais』コレオを完成させてきてもらいます」
泣きそうだ。
一日限りのあのレッスンでもたまに夢に見るくらいトラウマなのに、今度は三週間と来た。
しかもあの人のコレオなんて、見る前から殺人級の難易度が見え透いている。一曲目で安心したのが立派なフラグだった。
私、果たして生きて帰れるのかな。
内心で思いっきり頭を抱える私をよそに、静琉は続ける。
「さて、その活動拠点がどこにあるかというと──」
静琉の合図で、スクリーンが切り替わり始めた。
「またアメリカっすかね」
「ニューヨークとか……?」
隣の栄輔とそんなふうに囁き合う。
けれど、数秒後、目の前に映し出された文字は──
『マドゥレイラ』
「「…………どこ??」」
