遥風から発される絶対零度の殺気にも、京はニコニコと余裕の表情で動じない。
対照的に、私の心臓は口から飛び出そうなほど加速し、平静を保つのがやっとだった。
黙っとけって言ったのに……!!
この人たち、私のことになると途端に冷静さかなぐり捨てて、最悪なマウント合戦を開戦してしまうの本当にやめてほしい。
一触即発。
スタジオ内の温度が急激に低下し、あと一ラリーでも続けば殴り合いの火蓋が切って落とされそうな雰囲気だったが──
そのとき。
「はい、収録始めまーす!!」
奇跡的なタイミングで鳴り響いた、スタッフさんの合図。
かっ、神……!!
思わず振り向くと、数メートル先でこちらを見ているスタッフさんたちとバチッと目が合う。
少し怪訝に思った、その瞬間。
彼らは全員、これ以上ないほど力強く、グッと親指を立ててくれた。
……え。
一瞬、息が止まる。
……前々から、なんとなく思ってはいた。
絶好のタイミングで修羅場に割って入ってくれるスタッフさんの合図が、妙に多いな、と。
偶然かと思ってたけど、運の悪い私に限ってそんな幸運が何度も降りかかるはずがない。
それに今の反応を見るに、もしかしてあれって……毎回私を心配して、意図的にやってくれていたことだったの?
そのことに気づいた瞬間、心臓の奥の方がじんわりと温かくなった。
優しすぎる……!!
