さっさと嫌いになってくれ〜アイドルオーディションで嫌われたい男装美少女、なぜか姫ポジ獲得?!〜



息が止まるくらいの、抱擁の強さ。

シルクの生地越し、密着した硬い身体。

いつも余裕ぶった彼の心臓の鼓動が、バクバクと昂って、骨を伝って響いてくる。

そこから、彼が今までどれほどの地獄を味わって、どれほど自分を押し殺してきたのかが透けて見えるようで、胸の奥がずくんと痛んだ。


……そう、だよね。

そりゃ、死にそうにもなるよね。


誰よりも寂しがりやで、誰よりも嫉妬しやすい京が、ここまで協力してくれたのに。

私はいつも勝手な行動で心配させてばっかりで、しまいにはこんなしんどい思いをさせてしまった。


そう考えれば考えるほど、どうしようもない罪悪感が湧き上がり、何もせずに黙っているわけにはいかなくて──

気づけば私は、そっと手を伸ばし、京の頭に手で触れていた。



「……ごめん」



ぴく、と反応する京。

そのさらりとした髪に指を通して、軽く撫でる。



「本当に、ごめん」



……京が辛いってことは、早い段階からずっと分かってた。

けれど、彼が大丈夫って言うなら……と思って、甘えてしまっていたのは私の方だ。


もっと、ちゃんと線引きもできたのに。

必要以上に関わらせないようにすることもできたのに。


自分のことでいっぱいいっぱいになって周囲が見えていなかった?

いや、違う。

見ないふりをしてただけだ。


あの雨の日に、飄々としたふりをした彼の横顔から目を逸らしてしまった時から、そもそも間違えていたのだ。