さっさと嫌いになってくれ〜アイドルオーディションで嫌われたい男装美少女、なぜか姫ポジ獲得?!〜



──長いキスの後。ようやく唇が解放されたかと思えば、今度はぞくりとするほど低い声が落ちてきた。


「……約束、破ったでしょ」


ドクン。

心臓が大きく跳ね、全身の血がさぁっと引いた。



なんで──

なんでバレてる?



『約束』。

九条家でも、頭をよぎったそれ。

結局私はその枷を自分で振り切って、彼らの求める条件に頷いてしまった。


だから、京にだけはなんとしてでも、隠し通そうと思っていたのに──


「なん、で……?」


バクバクと加速する心臓、ジワリと滲む冷や汗。

弱々しい声で聞き返す私を、京はふっと冷たい目で見下ろした。


「俺があいつのスマホ隠すの手伝ったの、覚えてない?」


──あ。

その曖昧な一言だけで、なんとなく察せてしまった。


あのとき──

私が霞に初めて本格的に接触した雨の日。


京は、霞のスマホを隠すのに協力してくれていた。

私は単なる彼の善意ゆえの手助けかと思っていたけど──
あの峰間京が、あんな好機をみすみす逃すわけがない。


きっと、あの期間で霞のスマホに何か細工をしていたのだろう。

位置情報か、盗聴か、盗撮か、もしくはその全部かもしれない──なんにせよ、そういった類の見張りを。