「……行けば?追いかけねぇよ」
言いながら、ふ、と目を細めてこちらに視線を投げてきて。
「だって、どれだけ連れ出されたって──千歳はもう、俺から逃げらんねぇもんな?」
首を傾げ、わざとそんなふうに煽ってくる。
わざわざ、火に油を注ぐようなことを……!!
否定も肯定もできずに唇を噛む私。
その不穏な言葉に、京はスッとその瞳に苛立ちを滲ませたけれど。
それ以上何か言うより早く、廊下の向こう側からこちらへ向かってくる足音と怒号が聞こえ始めた。
……これ、まずいんじゃ?
「……チッ」
京は霞を睨みつけ、忌々しげに一つ舌打ちを残すと。
そのまま迷いなく窓際に歩み寄り、バンッと開け放つと、枠に片足をかける。
「え、ちょ……」
「舌噛まないように」
嫌な予感に表情を引き攣らせた、次の瞬間。
彼は少しも躊躇わずに、窓からふわりと飛び降りた。
ふ、ざけるな──!!!!!
一階の部屋とはいえ、窓の下には高めの石垣がそびえている。一歩間違えたら骨折の高さだ。
視界が滲み、胃のあたりが浮き上がる強烈な浮遊感。
バサバサとワンピースが風に煽られるけれど、裾がはだけそうになるのを気にする余裕なんて一ミリも無い。
ああもう、なんで私の周りって、こんな無茶苦茶な人ばっかなの……!!!!
あまりに命知らずな行動に、私はもはや半分死を覚悟しつつ。
ただただ必死に、京の首に腕を回してしがみつくことしかできないのだった。
