さっさと嫌いになってくれ〜アイドルオーディションで嫌われたい男装美少女、なぜか姫ポジ獲得?!〜


衝撃的な光景を前に、私は口をあんぐり開けて硬直。

ちょ、この人、手術したばっかりで立派な怪我人なのに……!!京、これがバレたら今度こそ指詰め東京湾だよ……!?

などなど、色々と言いたいことはあったけれど、ショックのあまり言葉が喉に詰まって出てこない。


「痛った」


唇にじわりと滲んだ血を拭いながら、霞は苦笑混じりに吐き捨てる。


京はそんな彼を、殺気立った冷たい視線で見下ろしていた。

いつものヘラヘラ軽薄なトーンは跡形もなく、完全にガチギレモード。


「……俺がこんな我慢してんのに、お前ごときが一線超えていいわけねーだろ」


今まで聞いたことのないような低い声に、こちらの背筋がぞくりと慄く。

いまだにどうすればいいか分からず固まっていると、そんな私の方に京は不意に手を伸ばしてきて。


そのまま、ひょい、と紙でも持ち上げるみたいに軽々抱き上げた。

いわゆる──お姫様抱っこ。


「っ……?!」

「貰ってくから」


慌てる私をよそに、そんな言葉を落とす京。

しかし霞は苛立つ様子もなく、むしろどこか余裕すら滲ませた瞳で京を見上げた。