さっさと嫌いになってくれ〜アイドルオーディションで嫌われたい男装美少女、なぜか姫ポジ獲得?!〜



……もう甘ったるい演技を続ける必要はないのだ。

ここから更に懐かれたらどんどん関係が拗れていきそうだし、下手に優しくしてはいけない。


そう判断した私は、少しため息を吐くと、できるだけツンケンした態度を保って返す。


「近づいたら絶対襲うじゃないですか」

「襲わねぇよ。ちゃんと足見ろ。こんな固定された状態でバッコンやれるわけねぇだろ」


苛立ったように吐き捨てる霞。

相変わらず口は死ぬほど悪いけれど、確かに彼の言うことも一理ある。


加えて、よく考えたら今の彼は脚に麻酔が効いてる状態だろうから、おそらく物理的に元気ではないはずだし……。


ちょっと、だけ。

私はそう自分に言い訳すると、恐る恐るベッドの側まで歩み寄った。


傍に置かれた椅子に、腰を下ろす。

月明かりの下、霞と視線が交わった。

ノーセット状態の彼と顔を合わせるのは初めてで、どこか無防備で柔らかい空気の彼に少し違和感。


「……千歳」

「なんですか」

「すげぇ可愛いよ、お前」


……違うのは外見だけじゃなかった。

態度もまるっきり違う。


男の格好をしている時とは似ても似つかない、柔らかい表情。

そしてあからさまな甘々ボイスに、胸焼けしそうになる。