私、知らず知らずのうちに失礼なことしてないかな?大丈夫?と今更不安になって真っ青になる私に、総一郎さんは続ける。
「それに、霞様のおそばに仕えておりますと、彼に近づくお嬢様方と関わる機会も何かと多うございます。
そうした折に、どの女性が霞様の伴侶に相応しいか見定めるのも、爺に課された役目のひとつでしてな」
人の本質は、弱きものへの振る舞いに如実に現れるものですから……としみじみ頷く総一郎さんをよそに、私は一人表情を引き攣らせていた。
……そういう、こと。
じゃあ、あの時廊下での会話も、私にとっては何気ないものだったけれど──
この人からしたら、完全なる『審査材料』だったわけで。
どういうわけかは知らないが、何故かそれが許嫁選定基準をクリアしてしまったということらしい。
……って、いや、なんでよ。
「私なんかに務まる立場じゃないと思うんですが……」
私が眉を下げてそう言うと、総一郎さんは胸の前で両手を組んでキラキラとした瞳を向けてくる。
「いいえ!千歳様はまさに霞様にピッタリ!爺の追い求めてきた理想の女性でございます♡爺があと五十年若ければ真っ先に口説いてた♡」
「買い被りすぎです」
「いいえそんなはずがございません。順を追ってご説明いたしましょう」
パチン、と総一郎さんが指を鳴らすと同時に、お手伝いさんたちによってガラガラガラッとホワイトボードが運び込まれてくる。
いや、どっから出てきた?しかもあらかじめなんか書いてあるし……。
ドン引きの私をよそに、総一郎さんはすっくと立ち上がると、ホワイトボードに箇条書きで書かれた文字を指して熱弁をふるい始める。
