「あたっ、頭っ、上げてくださいっ……早くっ、」
完全にパニックに陥りながらなんとかそれだけ絞り出すと、執事……いや、総一郎さんはニコニコと微笑みながらゆったりと身を起こした。
「腰はすっかり曲がってしまいましたが、若い頃は霞様に負けず劣らずの美男子でしてね。ホホホ」
いや今そんなことはどうでもいいんだよ。
「じゃ、なんで今こんな雑魚みたいな立ち回りしてるんですか?!」
パニックになりすぎて思わず飛び出た不躾な質問にも、総一郎さんは少しも動じず、むしろ楽しそうに目を細めた。
「……今、表向きの総長は息子に譲っておりますが、あれはいかんせん親馬鹿が過ぎましてな。
どうも当てになりませんので、実際の采配は今も爺が執っております。
もっとも、それが露見して仕舞えば、私自身も表では動きにくくなる。
こうして、ちんまい老いぼれ執事にでも収まっていた方が、何かと融通が利くのですよ。ホホ」
「…………」
なんということだろう。
面白いくらいにまんまと騙されていた。
こんなマスコットキャラみたいな可愛いお爺様が、まさかの院政中の実質ラスボスだなんて……
一体どこの誰が想像するだろうか。
