「……霞様が千歳様を泳がせていた理由は、榛名優羽率いる春霖会との全面抗争を避けたいという戦略的なご判断」
……なるほど。それなら、確かに普通に納得できる。
私のバックには、まだ一応榛名優羽がついている状態。
ここで無闇に私を消そうとしたら、面倒ごとが起こるのは確実だ。
逃げようとしている相手に不覚にも守られてしまったという事実に、モヤモヤは残るけれど……それでも命拾いしたんだから、喜ぶべきなのかな?
複雑な心境でお茶を啜る私に、執事さんは続ける。
「そしてもうひとつ──
千歳様を許嫁に迎えたいという霞様のご意向でございます」
「っ?!」
不意打ち。
予想だにしていなかった単語にノックアウトされ、私はお茶を吹きそうになってしまった。
えっ……は?
何?は???
許嫁?霞様の……????
えぇ??えっと、あの、
「はぁ……?」
「ですから、千歳様を許嫁に迎え」
「聞こえてますそれは」
分からないのは言葉の意味ではない。そのご意向が罷り通ってしまっているこの状況だ。
私、一応今、敵対組織トップの義娘なんですけど……?
下手したらスパイで、内部から食い破られるリスクだってあるのに。
九条霞はそれでも、リスクより私とのキスの気持ちよさを取るというのか。
