さっさと嫌いになってくれ〜アイドルオーディションで嫌われたい男装美少女、なぜか姫ポジ獲得?!〜



「待っ……っ、ひ、ぁ」


濡れた状態の肌を強く吸われ、皮膚に微かな痛み。

霞は痛みで理性が朦朧としているからか、なかなか止まってくれなくて。


「んっ……!」


今度は唇にまでちゅ、ちゅ、と何度も執拗にキスを落とされ、119どころじゃない。


このっ、バカ……!!


動きを封じられながらも、なんとか身を捩って抜け出そうと四苦八苦していた、そのとき。


──路地の入り口に、黒塗りの高級車が音もなく滑り込んだ。

ヘッドライトが、雨粒を白く照らし出す。


……え。


私が固まっている間に、後部座席のドアが開き、黒い傘を差した人影がひとつ降りてきた。


間違いない──
目当ては私たちだ。


「ちょっ、先輩、誰か来っ……っ」


焦って声を上げようとしても、霞は離れる気配すらない。

ああもう、ホントいい加減にしてっ……。


物理的に拘束されてされるがままになりながらも、私は肩越しに、目を凝らしてその傘の主を捉えようとする。


敵?それとも知ってる人?


ヘッドライトの逆光で顔はよく見えないけれど──

そのシルエットには、妙な既視感があって、私はちょっと顔をしかめた。


小柄な体躯。スーツ。
そして、傘の影から覗いた──丸メガネ。


……まさか。