さっさと嫌いになってくれ〜アイドルオーディションで嫌われたい男装美少女、なぜか姫ポジ獲得?!〜


その後。

一旦荷物を取りに家に寄るという双子と別れ、一人で駅に向かう道すがらも、私の頭の中はさっきのことでいっぱいだった。


……本当に、私、何もしないでいいのかな。


これから先もこういう類の悲劇は絶対に起こって、私はその恐ろしさを嫌というほど分かってるのに。

それを全部見ないふりして、のうのうと生きていけるんだろうか。

少しでもそういうことを減らすために、もっと何かをしたほうがいいんじゃないか。


……でも。

その『何か』って、何?


下手に正義を振りかざしても、また自己満足のお節介になるだけなんじゃ。

というか、そもそも敵は誰?

明確な悪人はいない。じゃあなに、空気?……いや、空気とどうやって戦えっていうの?


……むず痒い。

ニュースで、大きすぎる問題を前にしたときみたいだ。


絶対、このままじゃダメなのに。

誰かが苦しんでいて、世界は明らかにおかしい方向に進んでるのに。

結局、自分ひとりに何ができるのかなんて、なにも分からない。


……いっそ、教科書に出てくる偉人みたいな人が現れてくれればいいのにな。


諸悪の根源を導き出して、悪いものを全部薙ぎ倒して、ものごとを正しい方向に持っていってくれるような。

そんな都合のいいヒーローが出てきてくれれば、私、全力でその人を応援するのに……。


最終的にはそんな他力本願的な思考に流れ着いてしまう自分に、思わず苦笑する。

やめよう。このままだと、思考がどんどん宇宙に流れてくだけだ。