さっさと嫌いになってくれ〜アイドルオーディションで嫌われたい男装美少女、なぜか姫ポジ獲得?!〜



……きっと、心の中で何度も何度も反芻して、擦り切れた記憶だからなんだろうな。


「だからさ。アイドルになって、ちゃんと稼いで、自立して──そのあと、裁判起こして復讐するんだ〜」


わざとらしく、甘ったるい語り口。

けれど、その瞳には微塵も冗談の色は滲んでいない。


……陽斗のお金への貪欲さや、デビューへの異様なまでの固執。

全部、彼の野心の強さゆえかと思っていたけれど──
話を聞くに、どうもそう単純なことでもなさそうだ。


……私も、母親から暴力まがいのことは何度もされてきた。

けれど、それは相手が私だから耐えられた話で。


もしその矛先が私の大切な人、例えば琴乃なんかに向いていたら、陽斗みたいに復讐に走っていた可能性だって十分にある。


でも、外から見ていると──

今の陽斗は、ちょっと危うい。


父親を社会的に叩き落とすためには、どんなことにも手を出してしまいそうな怖さがある。


これはどう反応するべきか、と頭をフル回転させる私。

その隣で、ずっと黙って話を聞いていた雪斗が顔を上げた。


「……まだそんなこと言ってんのかよ、お前」


押し殺した低い声。

彼は心底苛立った様子で、はっきりと眉根を寄せていた。


「母さんは、俺らに復讐なんて望んでない。幸せになって欲しいから、二人でアイドルになれって言ったんだろ」

「……僕は、あのクソジジイを地獄に叩き落とさないと幸せになれないけど?」


ぴしゃり、と言い返す陽斗。

私を挟んで、空気が一気に険悪になり始める。


二人とも、学校のストレスで余裕がなくなっているのだろう。

怪しくなり始めた雲行きにちょっと冷や汗をかく私。