その意味深な言葉に、私も思わずひとつ瞬き。
「それって、どういう……」
「僕らもね、父親から逃げようとしてんの。千歳と一緒」
「……え」
思いもよらなかった言葉に、思わず間抜けな声が漏れた。
確か、私が前に聞いた話だと、双子のお母さんって既に亡くなってしまってるんじゃなかったっけ。
それなのに父親とも切れたら、家と縁を切ることと同義だろうに──
それでも逃げようとしてるって、一体全体何があったの?
「おい陽斗、やめろって」
焦ったように止めようとする雪斗だったけど、陽斗は「なんで?隠すことでもなくない?」とさらりと肩をすくめる。
「同じような境遇なら、いざという時のために繋がっといた方が得でしょ」
「……」
ドライな言い口に、押し黙る雪斗。
その沈黙を容認と受け取ったのか、陽斗はずり落ちていた姿勢を戻すと、軽い調子で続けた。
「僕らの父親ねぇ、ご機嫌斜めだと暴力三昧の最低野郎なの」
「……え」
またもや投下された衝撃発言に、私は言葉を失った。
……それは……DV、ってことだよね?
眉根を寄せ硬直する私をよそに、淡々と続ける陽斗。
「母さん、僕らのこと庇って何回も殴られてくれてたし。アル中パチンカスの父親の代わりに、パート掛け持ちして頑張ってくれててさ」
「……」
「病院に行く余裕もなかったから、体調不良もずっと放置で。ある日急にぶっ倒れて、そのままポックリ」
あまりに軽い調子で語られた重すぎる過去に、私はしばらく何も言えないままでいた。
……いつも通りのテンション。
なんなら、いつもよりむしろ明るいくらい。
その明るさが、逆に彼らの過去の辛さを痛いほどに伝えてくるような気がして、ちょっと目を伏せてしまう。
