朝。
いつも通り登校した俺・兎内雪斗は、教室ドアを開けた瞬間に回れ右をして帰りたくなった。
と、いうのも。
──九条霞の席。
ドス黒いオーラを放つ彼の目の前には、いつも通り傲岸不遜な佇まいの峰間京がいて。
バチバチバチッ、と火花の音が散るその異様なエリアを中心に、半径三メートルほどの無人地帯が形成されていたからだ。
……嫌な予感しかしねぇ……
「霞くん。どうだった?昨日」
「…………」
ちょっと首を傾げて、楽しそうに問う峰間京。
霞はそんな彼を一瞥もせずに、チッと特大の舌打ちをかますと。
ポケットに手を突っ込んだままガタッと立ち上がり、教室から出て行こうとする。
あ、良かった、直接衝突はしなさそう……と、内心安堵しかけた俺だったけれど。
すれ違いざま──峰間京が、霞の耳元にスッと唇を寄せた。
「可愛かったでしょ、千歳」
あ。
ヤバい──と思った、次の瞬間。
霞の腕が、乱暴に峰間京の胸ぐらを掴み上げていた。
そのまま強引に壁に叩きつけ、鈍い衝撃音が教室の壁を震わせる。
──うわ。
うわ、うわ、うわ、うわ。
