さっさと嫌いになってくれ〜アイドルオーディションで嫌われたい男装美少女、なぜか姫ポジ獲得?!〜



「んっ……、ぅ」


鼻から抜けるように、甘い声が漏れる。

びっくりするくらい甘くて、柔らかいキス。


こんな誰が来るかも分からないところで、押し退けないといけないはずなのに、気づけばすぐに抵抗する力が入らなくなっていて。


「…………ふ、……まって、……っ……」


息継ぎの合間に言葉だけ抗議するけれど、全然聞いてくれなくて、何度も、角度を変えて唇を食み直される。


抵抗するように京のシャツの襟元を掴んだら、煽ってるとでも捉えられたのか、グッと後頭部を押さえられ、さらに密着して。

さらには腰にも手を回され、本格的に逃げ場がない。

脳の芯がじんわりと甘く痺れ、思考の輪郭がぐずぐずに溶けてゆく。


混乱しきったなかで、私はなんとか周囲の状況を確認しようと、薄く目を開けた。


──と、そのとき。


京の肩越し。


電気の消えたラウンジ入り口付近に──

凍りついたようにこちらを見ている人影を捉えた。


その見慣れたシルエットに、私は思わず目を見開く。



……か……霞……?!