さっさと嫌いになってくれ〜アイドルオーディションで嫌われたい男装美少女、なぜか姫ポジ獲得?!〜


抱き締める腕の力が、すごく強い。

けれど、それは欲情というよりも。


──行かないで。

俺のそばにいて。


そんな縋るような色が、濃く滲んでいるような気がした。


この一ヶ月、終始余裕たっぷりに見えた京だったけど──

その飄々とした仮面の裏で、どれほどの飢餓感を押し殺して、私の作戦に付き合ってくれていたんだろう。


榛名優羽の脅威から、私を守るため。

そんなぼんやりとした目的のために、目先の不安も焦燥も欲も、全部押し殺して、文句も言わずに協力し続けてくれた。


……本当は、誰よりも弱くて。

誰よりも、置いていかれることに怯えてる人なのに。


ここまで我慢させてしまったんだから、こんな反動が来てしまうのも当然のことだ。


「……ごめん……無理してるの、知ってたのに、」

「死にそうだった」


私の言葉に、ぎゅ、と甘えるように強まる腕。


「霞もだけど……千歳のこと変な目で見てる奴、多すぎるし」


苛立ったような息を吐き出して、肩に額を擦り付ける。


「付き合いたいとか抱きたいとか……千歳のこと、何も知らないくせに」


胸が、ギュッと痛いくらいに締め付けられた。