さっさと嫌いになってくれ〜アイドルオーディションで嫌われたい男装美少女、なぜか姫ポジ獲得?!〜



「……いいから、ちゃんと聞いて。次これ……」


熱い頬を制服の袖で隠すようにして、再度シャーペンを手に取る。

けれど、京はそのまま逃がしてくれる気はないらしく。


腰をずらすと、私の背後に回り込んで──

ぎゅっ、と後ろから遠慮なく抱き締めてきた。


「っ……?!?!」


ふわ、と鼻腔をくすぐる香水の匂い、背中に伝わる鼓動と体温。


えっ、なっ、なになになになに……?!?!


大パニック。

言葉を失い硬直する私に、京は耳元に唇を寄せ、甘く掠れた声を落とす。


「じゃ、このまま教えて。そしたら集中できる」


嘘つけ!


「誰かに見られるって……!!」

「いーから」


京の足の間に、すっぽり私の身体が収まる。

背後には胸板、腰には腕。物理的な逃げ場がない。


焦りと動揺でバクバクと加速していく心臓。

それを察されたのか、胸元に手を触れられて、耳元でふ、と柔らかい笑い声が零れた。


「……勉強は?」

「っ……」


誰がこんな状況で集中できるというのだろう。

何も言えずシャーペンを置く私。

それを降伏のサインだとでも受け取ったのか、さらにぎゅっと抱き寄せられ、体温が隙間なく密着する。


肩口に頭を預けられ、髪がさらりと頬を撫でて。

熱い吐息が首筋にかかり、びくりと身体がこわばった。


どうしよう。

今の京、多分、これまでの反動が全部きてる……。


さすがに離れてもらわなきゃ、と口を開こうとする私。

けれど、それよりも一瞬早く。


「……俺、けっこー我慢したんだよ」


ぽつり、と。

掠れて落とされたその声に、心臓がドクンと跳ねた。