ドクン。
重い鼓動。
熱い体温。
息を呑む気配。
一拍遅れて、心音が、我に返ったように早さを増していく。
……嫌だな。
こんなときでも、ポーカーフェイスでいられてしまう自分が嫌だ。
やっぱり血は争えないんだな、なんて感じる。
けれど、今日だけは、それが武器だから。
私は彼の硬い背をさするように撫で、そのまま唇を耳元に寄せると──
静かに、囁いた。
「──俺のこと以外見ないで、先輩」
ぴく、と強張る霞の身体。
そこから彼は微動だにせず、思ったよりも長い沈黙が落ちた。
……攻めすぎた?
内心小さく顔をしかめた、その瞬間。
──グイッ。
霞の手が私の顎にかけられ、顔を上向かされた。
「っ……!」
至近距離、じっと見下ろしてくる視線。
私の微かな動揺を見透かしたみたいに、霞の瞳がゆっくりと仄暗い熱を帯びて──
挑発するように、細められた。
「……キスしていい」
掠れた声。
答えなんか、聞く気は毛頭ないみたいで。
私が口を開こうとした頃には──
既に、唇は奪われていた。
