さっさと嫌いになってくれ〜アイドルオーディションで嫌われたい男装美少女、なぜか姫ポジ獲得?!〜



だって、それって──

かつて彼の爪を剥ぎ、鉛玉を撃ち込もうとしてきた人間たちと、何が違うんだろう。


目的が正しければ、全部正しいんだろうか。

その過程で傷つけられた人はどうなる?

私はこのひとの人生まで責任を取れない。

私がきっかけで、彼がさらに歪んでしまったらどうしよう……?


脳内を駆け巡る疑問符の数々。

ぐちゃぐちゃな思考。

浅い呼吸。

視界が、狭まる。



どうしよう、やっぱり、こんなことって──



私の中の正義感が、今までに無いほどけたたましく警鐘を鳴らし始めていた、けれど。



────うるさい。



私は無理矢理自分に鞭を打つように、膝の上で指先をギュッと握り込んだ。

爪が食い込む、かすかな痛み。

おかげで、逸れかけた意識が少しずつ現実に引き戻されていく。



冷静に、ならなきゃ。



私が戦うべき相手は、私の良心じゃない。


榛名優羽だ。


彼をどうにか潰すことができれば──

私の大切な人、大切な場所が守られる。


彼のような癌を一つずつ無くしていくことで、結果的に霞のことだって地獄から引き摺り出せるかもしれない。


今ここで引けば、きっと、もっと多くの人が傷つく。

何か重要なのかを見極めろ。


目先の良心に囚われてるようじゃ──

一番ほしい結末は、掴めない。


「……っ」


私は無言で、隣に座る霞の腕を引き寄せると。


そのまま──

ぎゅっ、とキツく抱きしめた。