桜ノ丘の約束-10年前の後悔-

2. 駅前の再会
 
 新幹線の改札を抜けると、小さなロータリーが広がっていた。
 そこには、懐かしい顔ぶれがいた。
 基翔、真、泰亮、純鈴、太一朗、美耶——。
 10年前、ずっと一緒にいた仲間たち。
「おお、やっぱり来たか。」
 最初に声をかけてきたのは泰亮だった。
 彼は以前と変わらず、自信に満ちた表情をしている。
「……お前がいるってことは、俺も正解だったってことか。」
「別に、そういうわけじゃない。」
 将貴は素っ気なく答えた。
 他のメンバーも、それぞれ気まずそうな表情をしている。
「……10年ぶり、だよね。」
 美耶が静かに言った。
「なんか……変な感じ。」
「そりゃそうだろ。俺たち、ずっと会ってなかったんだからな。」
 太一朗が苦笑する。
 誰もが、10年前のことを思い出していた。
 事故のこと、すれ違いのこと。
 そして、誰もが「誰が最初に言い出すのか」を探っていた。
 しかし、それを遮るように、純鈴が言った。
「……行こう。先生が待ってる。」
 その言葉で、一同は黙り込み、それぞれの荷物を手に取った。
 ——過去に触れることが怖い。
 しかし、今ここにいる以上、もう逃げることはできない。