桜ノ丘の約束-10年前の後悔-

1. それぞれの未来へ
   体育館を後にした彼らは、それぞれの人生へと戻る準備を進めていた。
 ——これから、どう生きていくのか。
 それが、彼らの次の課題だった。
「俺たち、ここでまた別々の道を歩むんだな。」
 泰亮が、少し寂しそうに呟く。
「でも、もう昔みたいに"離れる"わけじゃない。」
 基翔が、微笑みながら言う。
「これからは、"自分の人生"をちゃんと選んで歩いていく。」
「そうだね。」
 純鈴が、小さく頷く。
「でも、それぞれの道を歩んでも、私たちはちゃんと繋がっている。」
「また集まるって、約束したもんね。」
 美耶が、優しく微笑んだ。
「……それじゃあ、みんなの"これから"のこと、聞いてもいい?」
 智香が、おそるおそる尋ねる。
「私たち、それぞれが何を選ぶのか、ちゃんと知っておきたいから。」
「もちろん。」
 将貴が、静かに頷いた。
「じゃあ、一人ずつ話そうか。」

2. 将貴の選択
  「俺は、仕事を辞めるつもりだ。」
 将貴の言葉に、全員が驚いた。
「マジで!?」
 泰亮が、思わず声を上げる。
「前から言ってたけど……本気なのか?」
「ああ。」
 将貴は、静かに頷いた。
「この旅を通して、自分の人生を見直した。……俺は、今の仕事に情熱を持てなくなっていることに気づいた。」
「でも、辞めたらどうするの?」
 美耶が、少し心配そうに尋ねる。
「今のところ、決めてない。」
「決めてないのに辞めるの!?」
「そうだ。」
 将貴は、少し笑った。
「でも、今のまま走り続けるより、一度立ち止まって"自分が本当にやりたいこと"を考えたい。」
「……すごいな。」
 基翔が、感心したように頷く。
「俺たちの中で、一番堅実だったお前が、そんな選択をするとは。」
「堅実な人生だけが、正しいわけじゃないって気づいたんだよ。」
 将貴は、穏やかに微笑んだ。
「俺は、"自分の人生を選ぶ"って決めた。」

3. 智香の選択
  「私も……"選ぶ"よ。」
 智香が、静かに口を開いた。
「私は、今の仕事を続けながら、自分の言葉を届けることをしたい。」
「言葉?」
「うん。」
 彼女は、少し恥ずかしそうに笑う。
「私は編集者として、いろんな文章を扱ってきた。でも、これからは"自分の文章"を書いていきたいと思ってる。」
「つまり……作家デビューするってことか?」
 泰亮が、驚いたように尋ねる。
「そうなるかもしれないね。」
 智香は、少し照れくさそうに笑った。
「まだ何も決まってないけど、エッセイや物語を書いていきたい。……私が感じたことを、誰かに伝えるために。」
「すごいな。」
 美耶が、感動したように頷いた。
「私も、智香の文章を読んでみたい。」
「ありがとう。」
 智香は、静かに微笑んだ。

4. 泰亮の選択
  「俺は、今の仕事を続けるつもりだ。」
 泰亮が、腕を組みながら言った。
「でも、"周りを動かすリーダー"じゃなくて、"ちゃんと人と向き合う仕事"がしたいと思ってる。」
「……それって?」
「マネージメントの仕事から、もっと現場に近い仕事に移ろうと思ってるんだ。」
「え?」
「今までは、"どうすれば組織を動かせるか"ばかり考えてた。でも、これからは"一人ひとりがどう成長できるか"を考えたい。」
「泰亮らしいな。」
 将貴が、微笑んだ。
「お前は、リーダーとしての力を持ってる。でも、今まではそれを"全体をまとめること"に使ってたんだな。」
「ああ。でも、それだけじゃダメだって気づいた。」
 泰亮は、力強く頷いた。
「これからは、"人を支えるリーダー"になりたいと思ってる。」

5. それぞれの未来へ
  「じゃあ、次は俺か。」
 基翔が、ゆっくりと口を開いた。
「俺は……カウンセリングの勉強を始めようと思ってる。」
「カウンセリング?」
「うん。俺、人の話を聞くのが好きなんだよな。」
 彼は、少し照れくさそうに笑う。
「だから、もっとちゃんと勉強して、人の心を支えられる仕事がしたい。」
「すごいな……。」
 純鈴が、感心したように呟いた。
「私も、今の仕事を続けるけど、"人と協力して何かを作る"っていうことを、もっと大切にしたいと思ってる。」
「俺もだよ。」
 太一朗が、頷いた。
「俺は、"仲間と一緒に何かを作る"っていうのを大切にしたいと思ってる。」
 それぞれが、自分の未来について語る。
 ——彼らは、未来を選び始めていた。

6. 未来への一歩
  「じゃあ、俺たちは、またそれぞれの道を進むんだな。」
 泰亮が、少し寂しそうに呟く。
「でも、またここで会うんだろ?」
 将貴が、微笑む。
「ああ。当たり前だろ。」
 泰亮が、笑った。
「未来を生きるために、俺たちは今、自分の道を選んだ。」
「だから、またここに戻ってこよう。」
「そうだね。」
 智香が、桜ノ丘を見上げる。
「この場所で、また集まろうね。」
「うん。」
 彼らは、静かに頷いた。
 ——それぞれの未来へ進むために。
(第18章・終)